家や土地などの不動産を相続したときにかかるおもなお金は、相続登記にかかる費用と相続税です。
こちらでは、この相続登記にかかる費用と相続税の2つについてわかりやすく説明します。
- 不動産を相続した際にかかる費用は、大きく分けると相続登記にかかる費用と相続税の2つ
- 相続登記費用は、登録免許税、登記に必要な書類を取得するための費用、司法書士の依頼費用の3つ。相続税は、亡くなった人(被相続人)から相続人が受け取った財産に応じて課せられる額が決まる
- 相続税は相続を知った日から10ヵ月以内に納税しなければならない。また、相続登記申請も2024年4月からの義務化が開始すると、相続を知った日から3年以内に申請しないと罰則対象となる
- この記事はこんな人におすすめ!
- 実家の家や土地などを不動産を相続することになった人
- 不動産の相続にかかる費用や税金について知りたい人
もくじ
1.不動産の相続にかかるお金は「相続登記費用」と「相続税」
実家の家や土地などの不動産を相続するだけで、不動産の価値に応じた費用がかかります。
相続が発生してからあわてないためにも、あらかじめどれくらいのお金がかかるかを把握しておきましょう。
不動産の相続にかかるお金は、次の2つに大きく分けられます。
- 不動産の相続登記にかかる費用
- 相続税
それぞれについて、くわしく説明します。
2.不動産の相続登記にかかる費用
相続登記とは、家の名義を亡くなった人から相続した人に変更する手続きのことです。
相続登記には、次の3つの費用がかかります。
- 登録免許税
- 登記に必要な書類を取得するための費用
- 司法書士の依頼費用(自身で登記する場合は不要)
1つずつ説明します。
2-1.①登録免許税
登録免許税(とうろくめんきょぜい)とは、相続登記にかかる税金です。
相続登記の登録免許税は、不動産の価値の指標となる「固定資産税評価額」に、登録免許税の税率0.4%を乗じて計算します。
相続登記の登録免許税の計算式
登録免許税 = 固定資産税評価額 × 0.4%
固定資産税評価額は、毎年、市区町村から送られてくる固定資産税納税通知書に記載されています。手元にない場合は、役所で照会することができます。
2-2.②相続登記に必要な書類の取得費用
相続登記の申請には、亡くなった方と相続する人の戸籍謄本や住民票などを一緒に提出する必要があります。いずれも亡くなった人との関係性を証明するのに必要な書類です。
基本的な相続登記に必要となる書類や取得費用は、次のとおりです。
必要な書類 | 費用 |
亡くなった人の出生から死亡までの戸籍謄本 (複数の自治体で複数取得しなければならない場合もある) |
戸籍1通 450円 除籍等1通 750円 |
亡くなった人の住民票の除票または戸籍の附票 | 300円 |
相続人全員の戸籍謄本 | 1通 450円 |
相続人全員の印鑑登録証明書 | 1通 300円 |
家を登記する人全員の住民票 | 1通 300円 |
相続する家の登記簿謄本 | 1通 600円(ネット謄本の場合335円) |
相続人1人ずつ上記の書類を集めるのは大変なので、後述する司法書士に依頼することもできます。
その場合、1通あたりおよそ1500円が取得費用として別途かかるので、相続人全員分まとめて15通ぐらいで2万円以内ぐらいで依頼することができます(相続人が多すぎると別途かかります)。
ただし、印鑑登録証明書だけは司法書士でも取得できず、本人が取得しなければなりません。
2-3.③司法書士に相続登記を依頼する費用
スムーズに相続登記を進めるために、司法書士に報酬を支払って相続登記を依頼しても良いでしょう。
相続登記に添付する書類の取得は、ときに時間と手間を要します。
特に亡くなった方の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取得する作業は、亡くなった方の足取りを追って自治体を回らなければならないこともあります。
司法書士は「不動産登記」の専門家です。相続人に代わって登記申請する代理権を持っているので、複雑な相続登記でも必要な書類の取得から申請まで一手に任せることができます。
相続に関する揉め事がなければ、司法書士に依頼するのが一般的です。
法定相続人が誰かを調べ、どんな遺産があるのか調べるのを依頼すると平均6万円ぐらい、遺産分割協議書の作成も依頼するとさらに平均6万円ぐらいが追加されます。
先の説明した提出書類の取得も含めて司法書士に依頼すると、取得にかかる実費にプラス10万円ほどかかるとみておきましょう。
もし相続人同士で揉めているのであれば、相談先は弁護士になります。
相続についての相談先は「家を相続したときの相談窓口はどこが良いのか比較してみた」でくわしく説明していますので、ぜひご覧ください。
3.相続税
相続税とは、亡くなった人(被相続人)から財産を相続したとき、相続人が受け取った財産に課せられる税金です。
相続税の対象となるのは、相続した財産の総額になります。
不動産以外の財産があれば、相続税の対象はすべての財産を合計した額です。しかし、相続した財産が不動産だけであれば、相続税の対象となるのはその不動産の評価額になります。
相続税については「相続したお家に相続税がかかるかどうか簡単にわかる方法」でもくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
ここでは、不動産の相続税の計算方法について説明します。
3-1.不動産の評価額を算出する
家や土地などの不動産は、現金や預貯金のように金額を固定して計算できるものではないため、相続税評価額(そうぞくぜいひょうかがく)を算出する必要があります。
建物部分については、固定資産税評価額(こていしさんぜいひょうかがく)がそのまま相続時の評価額です。
戸建ての敷地や土地などの評価額を出すには、路線価(ろせんか)を使った計算が必要になります。
相続した不動産の評価額の計算方法について、詳しくは「相続した家の評価額の計算方法をわかりやすく説明する」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
3-2.相続税評価額から基礎控除額を差し引く
相続税評価額のすべてに相続税が課税されるわけではありません。課税されるのは、基礎控除額(きそこうじょがく)や控除額などを差し引いた額です。
基礎控除額は、次のように計算します。
基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
法定相続人とは、民法によって規定された一定の順序に従って相続人となる人のことで、配偶者と一定の血族(けつぞく:亡くなった人の血縁者)からなります。
まず、配偶者は必ず相続人となります。また、配偶者だけ相続するわけではなく、必ず配偶者と血族相続人が共同して相続します。
第1〜3順位の異なる血族相続人同士が共同して相続することはなく、あくまでも第1順位がいなければ第2順位といったように、次の順位で相続人となります。
つまり、故人の子と故人の親や、故人の親と故人の兄弟姉妹が一緒に相続人になることはありません。
血族相続人 | 内容 |
第1順位 直系卑属(ちょっけいひぞく:養子を含む子供・孫など) | 常に相続人となります。子供が死亡の場合は孫が代襲相続(だいしゅうそうぞく)で相続人となります。 |
第2順位 直系尊属(ちょっけいそんぞく:父母・祖父母など) | 直系卑属がいない場合、相続人となります。父母がいない場合は、祖父母が相続人とななります。 |
第3順位 兄弟姉妹 | 直系卑属・尊属共にいない場合、相続人となります。兄弟姉妹が死亡の場合、兄弟姉妹の子供(甥、姪)が相続人となります。 |
3-2-1.相続税の配偶者控除
配偶者は亡くなった人の財産形成に大きく貢献し、生計をともにしていたことが考慮されるため、相続税が大幅に軽減されます。
配偶者の税額控除額 = 法定相続分相当額と1億6000万円のいずれか大きい額を上限
3-2-2.小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例の適用が受けられるのは、次のうちの誰かが相続した場合です。
- 配偶者
- 同居していた親族
- 配偶者も同居親族もいない場合、別居していて一定条件を満たす親族
③の場合の「一定条件」は少し複雑で、その家に相続開始の3年以内に本人やその配偶者、本人と特別な関係性の者が住んだことのない相続人、かつその家を相続税の申告まで所有している人となります。
小規模宅地等の特例が適用されると、330平方メートルまでの土地であれば、減額割合は80%です。
つまり、2,000万円の相続税評価額の土地だと400万円に評価額が減額されることになり、当然、相続税も安くなります。
小規模宅地等の特例については、「相続税の簡単な計算方法と相続した不動産を売る時の節税方法を解説!」で詳しく説明しているので、ぜひ読んでみてください。
3-3.相続税率を乗じて相続税を算出する
ここまでで説明した、
・家を含めた相続資産の総額
・基礎控除額
・評価額が下がる特例や控除
が把握できれば、金額に応じた税率と控除額によって相続税が算出できます。
【相続税の速算表】
取得価格 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | 0万円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続した不動産が、評価額3,000万円の家と3,000万円の現金の計6,000万円で、配偶者と長男と次男が相続するケースを想定し、相続税を計算してみましょう。各々が相続する割合は、次のとおりとします。
配偶者:1/2
長男:1/4
次男:1/4
まずは基礎控除額を出します。
3,000万円+600万円×3=4,800万円
法定相続人の数が3人なので、基礎控除額は4,800万円です。
相続財産の総額が6,000万円なので、基礎控除額を引いても1,200万円残ります。この部分が相続税の課税対象となります。
控除しきれなかった1,200万円を各々の相続割合ごとに割り振ります。
配偶者:600万円
長男:300万円
次男:300万円
これが各々の取得価格となります。ここに上記の速算表に応じた税率をかけると、各々の相続税は次のようになります。
配偶者:60万円
長男:30万円
次男:30万円
ただし配偶者には控除がありますので、相続税はゼロになります。子どもには控除はないので、長男、次男ともに30万円を納税する必要があります。
参考 相続税がかかるかどうか判定シート国税庁4.相続登記と相続税の期日について
不動産を相続した場合にかかる費用についてわかったところで、それぞれの期日について説明します。
4-1.相続登記申請が義務化される
現在、相続登記には決められた期日はありません。そのため、名義人が亡くなった人のままで、所有者がわからない不動産が増え続けています。
そこで、対策として「相続登記申請の義務化」が2024年4月1日から施行されることになりました。
相続登記申請の義務化のおもなポイントは次の3つです。
- 相続登記申請の期限は相続を知った日から3年以内
- 期限内に相続登記申請をしなかった場合、10万円以下の過料の罰則対象となる
- 過去の相続分も義務化の対象となる
今後、不動産を相続した場合はもちろん、これまでに相続した不動産の相続登記をしていない場合も、2027年3月末までに申請をしないと罰則の対象になってしまいます。
相続登記は、相続した不動産を売却する際にも必要です。不動産を相続したら、早めに相続登記申請をしましょう。
東京法務局「相続登記が義務化されます(令和6年4月1日制度開始)」
4-2.相続税は納税期日に注意
相続税は相続開始(相続したことを知った日、通常は被相続人が亡くなった日)から10ヵ月以内に納税しなければなりません。
期日までに納税できない場合は、延納(分割して納める)することもできますが、延納期間中には利子税がかかります。
一括で納税しようにも、すぐに現金を用意できない場合は、家を売却したお金を相続税にあてることも可能です。
ただし家の売却には平均して4~5ヵ月かかります。不動産の売却代金で相続税を支払う場合は、すみやかに相続登記をして売却活動を開始しましょう。
まとめ
この記事のポイントをまとめました。
- 不動産を相続した際にかかる費用は、大きく分けると相続登記にかかる費用と相続税の2つ
- 相続登記にかかる費用は、次の3つ
・登録免許税
・登記に必要な書類を取得するための費用
・司法書士の依頼費用(自身で登記する場合は不要) - 相続税は、亡くなった人(被相続人)から財産を相続したとき、相続人が受け取った財産に課せられる税金で、相続した財産の総額から基礎控除を差し引いた額に課せられる
- 相続登記申請は、2024年4月からの義務化が開始すると、相続を知った日から3年以内に相続登記をしないと10万円以下の過料の罰則対象となる
- 相続税は、相続開始から10ヵ月以内に納めなければならない。売却代金を相続税に充てるつもりなら、すみやかに相続登記をして売却活動を開始すべき
不動産を相続した場合は、相続登記や相続税などの費用が必要です。
相続した不動産の評価額によっては、相続税が高額になる場合があります。
相続した不動産の売却額から相続税を支払うことも可能ですが、相続税の納付期限である10ヵ月以内に売却しなければなりません。不動産の売却は、早くても3〜4ヵ月程度かかるため、早めに行動することが大切です。
相続した不動産を売却したい場合は、ぜひ「イクラ不動産」をご利用ください。
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さらに、わからないことがあれば、宅建士の資格を持ったイクラの専門スタッフにいつでも無料で相談できるので、安心して売却を進めることができます。
イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
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