
父が亡くなった事故物件を売却したいと考えています。
葬儀屋さんに不動産屋さんを紹介してもらいましたが、いくらなんでも…という安い金額を提示されました。
事故物件の相場と、今後どうすべきか教えて欲しいです。
ご相談ありがとうございます😊✨
事故物件の場合は、普通の売却と異なって…
こちらは、スマホの不動産屋さんをご利用いただいたお客様の実際のご相談内容になります。
人がお家で亡くなると、いわゆる「事故物件」になってしまい、売却しても価格がかなり落ちてしまいます。

事故物件を売却するうえで一番の問題点となるのは、人気がないことを理由にして、相場より大幅に安く買い叩く不動産会社がいることです。

そんなことはありません。事故物件であっても、事故物件なりの売却方法があります。
こちらでは事故物件とはなにか、売却の流れや相場、売るときの注意点など、事故物件の場合どうすべきかついてわかりやすく説明します。
もくじ

事故物件とは?
事故物件とは、自殺や他殺など、その家で人の死に関わる事件や事故が起きた不動産(マンション・一戸建て・土地を含む)のことです。
基本的に病死や自然死は該当しないとされていますが、事故物件に定義はありません。孤独死などは事件性がないとしても人の死が関わっており、人によっては敬遠する対象となりうるので、事故物件に該当する場合があります。
そもそも事故物件は「心理的瑕疵(しんりてきかし)」によって判断されるものなので曖昧な部分があり、「事故物件にあたるのか」、「価格はどれくらい下がるのか」というのは一概に決まっているものではありません。
心理的瑕疵(しんりてきかし)
事故物件は、「心理的瑕疵物件」といわれることもあります。
「瑕疵」とは、見えない欠陥や欠点、過失などの意味で、不動産業界ではよく用いられる言葉です。心理的瑕疵に対して「物理的瑕疵」は、雨漏りやシロアリ被害、排水管のつまりなどが挙げられます。
心理的瑕疵は、住む人に「心理的にそこに住むのは気が引けるなぁ」と思わせる事象のことです。人の死に関わる事件が起きた物件の他にも、
・隣地がゴミ屋敷
・近隣に宗教施設や暴力団の施設がある
などの物件も心理的瑕疵物件に該当します。
参考 瑕疵担保責任とは?イクラちゃんねる事故物件に該当するのは事故死のみ?
「自殺は事故物件である」と法律で明確に決まっていないだけで、不動産取引の慣行(かんこう:習わしやしきたりとして古くから行われていること)として事故物件に該当するかどうかは、事故死か自然死かによって分かれると考えられています。
事故物件として扱われるのは、事故死に該当する死が物件内で生じた場合です。
- 事故死:自殺、殺人、変死、事故死(転落や転倒など)、孤独死、病死
- 自然死:病死、老死、孤独死、突然死
ただ、自然死でも、事故物件に該当する場合があります。
それは、警察を呼んだ場合です。
例えば、家で倒れて救急車を呼び、搬送先の病院で死亡した場合は、死亡場所が家ではないので、事故物件に該当しません。
しかし、救急車を手配している最中に亡くなった場合、救急隊員が自宅に到着し、死亡していると判断すれば、病院に救急搬送することはありません。警察に連絡が行われ、警察が事情聴取や遺体の検死、場合によっては解剖が行われます。
こうなると、周辺に住んでいる人にパトカーが来ていたことを知られます。そして、パトカーが来た理由が「亡くなった」という理由であることは、あっという間に広まります。

売却理由が人の死であるにも関わらず、このことを次の買主に知らせず、買主が近隣の人からこの事実を聞かされたらどうなるでしょうか?
「契約不適合責任」で買主から訴えられる可能性があります。

かつて、家族に看取られながら死亡した場合は、事件性が低いとして事故物件ではないとされていました。ただ、現在は時代が大きく変わり、体調が悪く亡くなる直前は病院であることが一般的です。
なかには、かかりつけの医師が家にきて看取る場合があります。そして、自宅で死亡の状態を確認して特に不審な点がなければ死亡診断書を作成してくれますが、記載項目である「亡くなった場所」は、もちろん「自宅」になります。

という不動産会社もありますが、かなり危険です。後でなにかあったときに訴えられるのはあなたです。このように、事故死以外の自然死の場合でも、自宅で亡くなってしまった場合は、後から揉めないように不動産会社や買主にしっかり伝えましょう。
病死の場合については、「病死があった家は事故物件になるの?」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
告知義務:事故物件ということを隠して売ってはいけない
事故物件を売却するときは、「告知義務(こくちぎむ)」を果たす必要があります。告知義務とは、心理的瑕疵に限らず、売却前に、売主が知っている物件の瑕疵を、買主に伝えなければならないという売主の責任のことです。
売主が告知義務を果たさず、売却後に瑕疵の事実が買主の知るところになれば、損害賠償請求をされたり、詐欺罪に問われたりする可能性があります。
- 一戸建ての建物を壊して更地にしたから、告知する必要はないと思った
- 事件から何年も経過しているから、告知する必要はないと思った
- 事件があった家を取り壊して更地にしたため、告知義務を果たさなかった
このような場合でも、買主側の損害賠償請求が通ったという判例も多くあります。
例えば、平成20年4月28日に東京地裁が判決を下した事例に、中古マンション1棟を購入して転売した売主業者が、転売に当たり、前所有者家族の飛び降り自殺の事実を告知、説明しなかったとして、慰謝料名目の損害賠償を命じられた事例があります(判例タイムズ1275号329頁)。
建物を壊して更地にしてもダメです。特に最近は事故物件サイト「大島てる」を見て、確認してから購入する人も少なくありません。
事件や事故から時間が経てば告知義務がなくなるというものではありませんので、売主が知り得ている事実は包み隠さず告知するようにしましょう。買主にはもちろん、不動産会社にもです。
参考 不動産売買契約書の「瑕疵の責任」とは?イクラちゃんねる一方、マンションで飛び降り自殺があった場合は、全住戸が事故物件になるというわけではありません。
このように人の死に関わった物件でも、事故物件になるかならないで、価格に大きな差が出てきます。事故物件ではない場合、一般的な物件の売却方法と同じです。
事故物件でない場合については、「家を売る方法は4種類!はじめての方に宅建士がわかりやすく解説!」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
自然死の場合でも、告知義務事項に該当するかチェックが必要です。
事故物件の売却相場
事故物件と何も起きていない物件が全く同じ価格であれば、誰もが何も起きていない物件を選んで購入するでしょう。
多くの人が心理的瑕疵と感じる事象がある物件は、まず相場通りの価格で売ることができません。
ケースによって異なるため、一概にはいえませんが、相場価格から自殺で3割前後、他殺(殺人)で5割前後の値引きは必要になると覚悟しておくべきでしょう。
一方、孤独死については、言い方は悪いのですが高齢化、核家族化の昨今よくある事象でもあります。発見にいたったまでの期間(時間)にもよりますが、ハウスクリーニングなどをすればそこまで価格は落ちない傾向があります。ただし、数日後に発見し、すでに悪臭を放ってしまっている場合は、事故物件と同様に相場よりも価格が落ちることがあります。
ただし、心理的瑕疵は、人によって感じる度合いが異なります。
例えば

という人もいれば、

という人もいるはずです。また事件や事故の凄惨(せいさん:目をそむけたくなるようなむごい様子)さや経過年数によっても、感じる心理的瑕疵の度合いは異なるでしょう。
そのため事故物件の価格は、売り出したときの買主からの反応や問い合わせ件数をみて、随時変更していく必要があります。
事故物件の売却方法
事故物件における売却方法は、次の3つです。
- 普通に市場で売る
- 期間を空けてから売る
- 不動産会社に買取してもらう
①普通に市場で売る
事故物件だからといって、一般的な売却方法で売れないということはありません。
しかし、相場価格から自殺で3割前後、他殺(殺人)で5割前後の価格で売り出したとしても売れなかったり、そもそも不動産会社に売却活動を断られたりするケースもあります。
②期間を空けてから売る
「価格を安くしても売れない」、「これ以上値段を下げたくない」という場合は、心理的瑕疵を和らげてから売却するのも1つの手です。具体的には、次のような手段が考えられます。
- ハウスクリーニングやリフォーム
- 事件・事故のあった家を取り壊す
- 時間を置いてみる
これらのことを行ったとしても、事故物件でなくなるわけではありませんし、告知義務も引き続き果たす必要があります。
しかし、「人の噂も七十五日」という言葉もあるように、心理的瑕疵はあくまで気持ちの問題なので、少しでも「住みたくない」と思わせる部分を和らげることができれば、売却できる可能性は高まります。
ただし、いずれもお金がかかったり、判断が難しいので、不動産会社と相談し、アドバイスを受けてから対策を講じるようにしましょう。
③不動産会社に買取してもらう


事故物件の場合、不動産会社に内密で買取してもらうという人が一番多いです。
不動産会社に買取してもらうことのデメリットは、事故物件としての相場価格よりさらに金額が落ちてしまうことです。
例えば、相場価格3,000万円の家の査定額が、事故物件であることを考慮され2,100万円になってしまったとします。この場合、買取業者に売るとなると、そこからさらに2~3割価格が下がり、1,500万円になることもあります。
一方、メリットは、周辺に知られることなく、すぐに売却できることです。物件の引き渡しまで最短数日から1ヶ月以内に完了させることもできるので、金額が安くなるとはいえ、売りにくい事故物件には適した売却方法ともいえます。
買取については、「【不動産買取】お家をすぐに売ることができる方法をかんたん解説!」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。
売却の流れと事故物件を高く売るポイント
不動産会社に事故物件を買取してもらうときの売却の流れは次の通りです。
- ステップ.1葬儀(そうぎ)
まずは、葬儀を執り行ってください。
- ステップ.2特殊清掃と遺品整理
高く売るポイント:不動産会社に相談する前に特殊清掃を行います。
- ステップ.3相続登記
亡くなった方が物件の名義人だった場合は、司法書士に依頼して相続登記をしなければなりません。
- ステップ.4不動産会社の選定・比較
高く売るポイント:手取りが高い会社を選びます。
※ステップ3とステップ4はどちらが先でも大丈夫です。
- ステップ.5売買契約
決定した不動産会社と不動産売買契約を結びます。
- ステップ.6代金の受け取りと物件の引き渡し
売買代金を受け取り、お家を不動産会社に引き渡します。
高く売る上で、重要なのはステップ2の「事前に特殊清掃すること」と「手取りの高い会社を選ぶこと」です。
事故物件で必ずやらないといけないのが特殊清掃です。特殊清掃とは、孤独死、自殺、事件現場の清掃を専門にを行い、現状を復帰(回復)する作業のことです。特に、遺体の発見が遅れ日数が経過してしまうと、汚染物の除去、体液、汚染物質、感染症予防の為の除菌、害虫の駆除や腐敗臭の消臭を行う必要があります。
特殊清掃をやらずに、不動産会社に査定を依頼すると大きく査定額が下がります。
査定するのは不動産会社の人間で、普段から「遺体」との接触回数が多いわけではありません。そのため、頭の中に「この物件を買い取って、ちゃんと売れるのかな?」と思った時点で、買取金額は間違いなく下がります。特に臭いが残っていると良くないイメージが浮かんでしまいます。最低限、特殊清掃してから、不動産会社に依頼しましょう。
特殊清掃の費用は、お家の面積によって異なり、5万円〜80万円ぐらいかかります。
また、不動産会社に買い取ってもらってお家を引き渡すときに、遺品や残置物をすべて処理しなければならないので、同時に遺品整理や残置物処理もしてしまうと良いです。お家を空っぽにした状態で、不動産会社に査定してもらいましょう。
また、不動産会社選定のポイントは「手取りの高い会社を選ぶこと」です。
事故物件は相場がないため、不動産会社ごとによって大きく買取金額が変わってきます。

と宣伝している不動産会社もありますが、専門であっても必ず高く買ってくれるわけではありません。
特に、葬儀屋さんから不動産会社を紹介してもらった場合は、高い紹介料を支払っている可能性が高いため、買取金額が安くなりがちです。
そのため、必ず複数の不動産会社で買取査定をしてもらい、そのときに

と聞いて価格を比較してください。手取りの高い不動産会社を選ぶことが、事故物件を高く売るコツです。
もし、事故物件でどうしたらよいのかわからない人や、一番ベストな方法を提案して欲しいという人、事故物件を買取してくれる不動産会社を紹介して欲しいという人は「スマホの不動産屋さん」でご相談ください。
あなたの状況をお伺いし、どのようにすべきかアドバイスさせていただきます。