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原価法とは?一戸建ての建物部分の査定方法をわかりやすく解説!

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原価法とは?一戸建ての建物部分の査定方法をわかりやすく解説!

一戸建ての査定は、建物部分と土地とに分けて行われます。その際、一戸建ての建物部分の査定額を出すために用いられるのが「原価法」という査定方法です。

ここでは、原価法で建物の査定額を出す手順や計算方法について、わかりやすく説明します。

具体的にわかるのは、次のようなことです。

【この記事で具体的にわかること】

  • 「原価法」とは一戸建ての建物部分の査定額を出す方法で、同じ建物をもう一度建てた場合にかかる費用(再調達価格)から経年による劣化分を差し引くこと(減価修正)で、現時点での価値を計算する
  • 一戸建ての敷地(土地)部分の査定には、過去に取引された事例を参考に査定額を算出する「取引事例比較法」が用いられる
  • 中古一戸建ての評価方法は、法定耐用年数のみに基づいた「20〜30年の建物の評価額はほぼゼロ」という考え方から、リフォームや補修状況が正しく評価される方向に変化し始めている
この記事はこんな人におすすめ!
一戸建ての売却を考えている人
一戸建ての査定方法や査定額を知りたい人
リフォームをしている一戸建ての査定方法を知りたい人

1.一戸建ては「建物」と「土地」に分けて査定額を出す

一般的に、一戸建ての査定額は「建物」と「土地」に分けて計算されます

なぜなら、建物は建てられてから時間が経つにつれて経年劣化により価値が減少していくのに対して、土地は経年劣化はしないものの社会情勢や景気によって価格が大きく変動するため、両方をまとめて査定額を出すことがむずかしいからです。

一戸建ての建物部分の査定額は「原価法」という査定方法で計算されます。一方、土地の部分の査定額を出すときに用いられるのは「取引事例比較法」という査定方法です。

2.一戸建ての建物部分の査定で使われる「原価法」とは?

原価法は、居住用の不動産で、一戸建て(一軒家・中古住宅)の建物部分を査定するときに使われる査定方法です。

原価法は、次のような手順で行われます。

  1. 再調達価格を出す:同じ家を建てると、1㎡あたりどれくらいの費用がかかるかを調べて、家全体分の価格を計算する
  2. 減価修正する:家が建てられてから、経年劣化でどれくらい価値が減ったかを計算する
  3. 査定額を出す:再調達価格を減価修正することで、現時点での査定額を計算する

よって、原価法による建物の査定額の計算式は、次のようになります。

原価法による査定額=再調達価格✕延べ床面積(㎡)✕減価修正(残耐用年数/耐用年数)

原価法計算1

原価法を計算するポイントとなるのは、再調達価格減価修正(残耐用年数/耐用年数)の2つです。

それぞれについて、詳しく説明します。

2-1.再調達価格

再調達価格(さいちょうたつかかく)とは、今すでに建っている建物を取り壊したと仮定して、同じ建物をもう一度建てたときに、費用がいくらかかるのかを計算した額です。

新築時にかかる1㎡あたりの単価は、銀行など金融機関や不動産会社によって多少異なりますが、あらかじめ建物の構造や部材によって、次のように決められています。

【再調達価格の計算で用いられる新築時の価格一覧表】
標準的 やや高単価 高単価
木造 14.8万円/㎡ 17.4万円/㎡ 20.9万円/㎡
軽量鉄骨造 14.8万円/㎡ 17.4万円/㎡ 20.9万円/㎡
(重量)鉄骨造 15.6万円/㎡ 18.3万円/㎡ 22.0万円/㎡
RC(鉄筋コンクリート)造 18.8万円/㎡ 20.9万円/㎡ 25.1万円/㎡
SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造 18.8万円/㎡ 20.9万円/㎡ 25.1万円/㎡

たとえば、延床面積100㎡の標準的な木造の家を、新築でもう一度建てたと仮定した場合の再調達価格は、次のような計算になります。

延床面積100㎡の標準的な木造の家の再調達価格=14.8万円×100㎡=1,480万円

2-2.減価修正

減価修正(げんかしゅうせい)とは、建物や建物の設備が経年によって劣化することで、価値が減った分を修正することです。

減価修正は、次の計算式で求めることができます。

減価修正=残耐用年数(耐用年数−築年数)÷耐用年数

ここでの耐用年数とは法定耐用年数のことです。

建物の構造や目的(事業用か非事業用)によって、法定耐用年数は次のように定められています。

【構造別・建物の耐用年数一覧表】
構造 耐用年数(事業用) 耐用年数(非事業用)
木造 22 33年
軽量鉄骨(3mm以下) 19 28年
重量鉄骨 34 51年
RC(鉄筋コンクリート)・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート) 47 70年

築年数が15年で、居住用(非事業用)として使われている木造の家の減価修正を計算してみましょう。

築年数が15年の木造居住用の家の減価修正=(33年−15年)÷33年=約0.55

この原価修正を再調達価格に乗じることで、現時点での建物の査定額が計算できます。

たとえば、先に再調達価格を算出した、「延床面積100㎡の標準的な木造の家」が築15年(減価修正0.55)の場合、原価法による査定額の計算式は次のようになります。

【築年数が15年で延床面積100㎡の標準的な木造の家の原価法による査定額】

14.8万円×100㎡×0.55=814万

ただし、築年数が耐用年数を超えている場合は、査定価格は、ほぼゼロと見なされる場合があります

このことについて、もう少し詳しく説明しましょう。

2-2-1.法定耐用年数と経済的耐用年数について

耐用年数には、法定耐用年数経済的耐用年数の2種類があります。

法定耐用年数とは、税務上、減価償却を計算する際に定められている耐用年数です。これに対して、経済的耐用年数とは、その建物が実際に使用できる耐用年数を指します。

減価償却についての詳しい説明は、次のとおりです。

MEMO

「減価償却」とは

減価償却とは、時間の経過や使用により価値が減少していく固定資産を取得した際に、購入費用をその耐用年数に応じて計上していく会計上の処理のことをいいます。

固定資産というのは不動産でいうと建物部分に該当します。例えば、家を新築で購入して、20年後も新築と同じ価値というのは無理があります。その20年の間に、家の劣化が進み、キッチンや風呂などの設備も老朽化しているからです。

つまり、減価償却とは、時間が経過すると価値が下がる資産の価値を、正しく評価するために行なう作業といえます。不動産の土地部分のように、時間の経過や使用により価値が減少しないものは、減価償却資産には含まれません。

減価償却の目的は、不動産の取得のために掛かった費用を、最初に支払い時に全て一回きりの費用とするのではなく、収益を得るために利用した期間に応じて経費として計上することが、企業会計にとって望ましいために使うとされています。

付け加えると、そもそも税金は、収入から経費を引いて残ったお金にかけられます。経費の方が大きくなると赤字になり、税金を払う必要がありません。

そこで、節税の方法のひとつとして、経費をできるだけ多く計上しようという考えになります。できるだけ収入に近い経費になると黒字額が少なくなり、税金が少なくて済むからです。

減価償却費は、数字上で価値が減っているだけなので、実際に支出した費用ではありませんが、経費として計上することができます。

このような法定耐用年数に対して、経済的耐用年数とは、実際に建物が十分に使用できる年数のことです。つまり、法定耐用年数よりも経済的耐用年数のほうが、より現実の建物の状態に即していると言えるでしょう。

しかし、立地や建築方法、管理状態などによって、一戸建てが利用可能な年数は大きく異なるのにもかかわらず、これまで一律に耐用法定耐用年数が使われてきました。

このような査定方法は、現実の建物の状態を反映しているものとは言い難いため、近年、国が制度を変更すべく動き始めています。

3.住宅の性能やリフォームが建物の評価に反映される動きについて

不動産を所管している国土交通省は、2014年3月に「中古一戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定しました。

この指針は、流通市場における中古戸建住宅の「家の建築後、20年から25年程度で一律に市場価値がゼロになる」とされるこれまでの既存住宅の取引慣行を改善し、住宅の性能やリフォームの状況などを的確に反映した評価に変更するというものです。

3-1.「中古一戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」で建物の評価がどのように変わるのか?

これまで、中古一戸建ての建物部分の評価は、リフォームをしても経年による下落ペースは変わりませんでした。

さらに、管理やメンテナンスがきちんと行われていることが前提となっており、メンテナンスの状況によってはマイナス評価になる場合もあるという、減点メインの査定方法だったのです。

しかし、今回の「中古一戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」では、建物の適切な補修やメンテナンスなどが行われているのであれば、建物の基礎や躯体の機能が失われていない限り建物の価値は回復、向上するという原則に基づいて、住宅の使用価値に応じた評価を行うべきだとされています。

つまり、下図のように、これまでだと経年によって価値がほぼゼロとされてきた建物であっても、リフォームやメンテナンスがきちんと行われていれば、建物の価値の下降が緩やかになるということです。

リフォームと資産価値1

リフォームと資産価値2

3-2.「既存住宅価格査定マニュアル」も改変

今回の「中古一戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」の策定と同時に、不動産会社が一戸建ての建物部分の査定で利用している公益財団法人不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」も改変されました。

既存住宅価格査定マニュアルとは、不動産会社(宅地建物取引業者)が、査定を依頼した消費者に対して、納得しやすい査定価格の根拠を合理的に示す手法として作成されたツールです。

改変された「既存住宅価格査定マニュアル」では、中古一戸建ての各部位の仕様やリフォーム等も評価されるようになっており、それらを加点してくことによって建物全体の査定価格が算出されます。

具体的な評価内容は、以下の図のとおりです。

リフォームと資産価値3

リフォームと資産価値4

リフォームと資産価値5

リフォームと資産価値6

リフォームと資産価値7

不動産流通推進センター価格査定マニュアルより引用)

不動産会社(宅地建物取引業者)は、このマニュアルのシステム上に物件の築年数や各部位のグレード、維持管理状態などの情報を入力することで、適正な査定価格を算出することが可能です。

不動産会社がこの改変されたマニュアルを用いることで、住宅の本来の使用価値を適正に反映した評価がなされることが期待されています。

しかし、このような仕組みは、国も制度の変更について動き始めたばかりということもあり、原価法の計算における耐用年数は、法定耐用年数を利用するのが現在も一般的であることを踏まえておきましょう。

4.一戸建ての土地部分の査定で使われる「取引事例比較法」とは?

最後に、一戸建ての土地部分の査定で用いられる「取引事例比較法(とりひきじれいひかくほう)」について説明します。

取引事例比較法とは、近隣にある査定したい物件と似ている物件が、過去に取引されて成約した事例を参考に査定額を算出する査定方法です。

農地や林地を宅地に(造成)して新しく土地を作った場合は、近隣の取引事例を確認し、その事例をもとに造成工事費や附帯工事費などを計上して、土地の再調達価格を計算することができます。

しかし、すでにある宅地(既成市街地)は、再調達価格の把握が困難なために不向きです。よって、一戸建ての土地部分は取引事例比較法を利用して価格を求めます。

土地の査定方法について、詳しくは「土地の査定方法である「取引事例比較法」をわかりやすく解説!」で説明していますので、ぜひ読んでみてください。

建物部分は、先に説明したように原価法で計算します。原価法で求めた建物の価格と取引事例比較法で求めた土地の価格を合わせた価格(積算価格といいます)が一戸建ての査定価格です。

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まとめ

この記事のポイントをまとめました。

  • 「原価法」とは一戸建ての建物部分の査定する方法で、同じ建物をもう一度建てた場合にかかる費用(再調達価格)に経年により劣化した分を差し引くこと(減価修正)で、現時点での価値を出す
  • 原価法による査定額の計算式:原価法による査定額=再調達価格✕延べ床面積(㎡)✕減価修正(残耐用年数/耐用年数)
  • 再調達価格の計算の基準となる額は、建物の構造やグレードによってあらかじめ決められている
  • 減価修正の基準として使われる耐用年数には、現在は「法定耐用年数」が用いられることが多く、法定耐用年数が過ぎた建物は価値がほぼゼロと評価されることもある
  • 「中古一戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」や「既存住宅価格査定マニュアル」の改変により、建物のリフォームや補修状況が正しく評価される方向に動き始めている

一戸建ての査定は、建物と土地に分けて行われ、建物の部分の査定には「原価法」が用いられます。

原価法における重要なポイントは、同じ建物をもう一度建てた場合にかかる費用「再調達価格」と、経年劣化でどれくらい価値が減ったかの「減価修正」です。

減価修正を算出する際には「法定耐用年数」が用いられることが多いため、リフォームしたり補修をしたりして大事にしてきた家でも、築年数が20〜30年になると価値がほぼゼロと評価されることもあります。

このような中古一戸建ての評価を変えようと、国交省が「中古一戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を策定し、公益財団法人不動産流通推進センターの「既存住宅価格査定マニュアル」も改変されましました。

これにより、建物の仕様やリフォーム等に応じた評価が適正に行われ、築年数の経った一戸建てでも高く査定されるケースが増えると見込まれます。

しかし、現時点においては、まだ査定において法定耐用年数が用いられることが一般的であり、一戸建ての査定がむずかしいとされる状況は大きく変わってないと言えるでしょう。

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※こちらの記事は、価格査定マニュアルに関して(公財)不動産流通推進センターの掲載許可を受けています。価格査定マニュアルは、無断使用(複製、改ざん、頒布などを含む。)を固く禁じられております。

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