市街化調整区域には、原則として家などを建てることができません。
そのため、市街化区域にある物件と比べて、安くなったり売れにくかったりすることが多いです。
こちらでは、市街化調整区域とはなにか、なぜ、市街化調整区域の不動産は売れにくいのか、また、市街化調整区域の不動産をどのように売却すれば良いのかについてわかりやすく説明します。
- この記事はこんな人におすすめ!
- 売却したい家や土地が市街化調整区域にある人
- 市街化調整区域にある不動産売却の注意点を知りたい人
- 市街化調整区域の売却に強い不動産会社を探したい人
もくじ
1.市街化調整区域とは?
市街化調整区域にある物件が、なぜ売れなかったり売れにくかったりするのかを説明する前に、まず市街化調整区域とは何かについて説明します。
1-1.市街化調整区域とは「市街化」を抑制する地域のこと
「市街化調整区域」とは、市街化を抑える区域、つまり、人が住むためのまちづくりを行う予定のない区域のことです。
「市街化調整区域」に対して、すでに市街化している区域や、今後10年以内に市街化を図る予定の区域のことを「市街化区域」と言います。
そもそも、利便性の高い市街地から離れて、郊外や田舎に向かうほど土地の価格は下がっていくのが一般的です。その途中で見えない線が引かれており、ある地点を超えると市街化調整区域という地域に入ります。
この市街化区域と市街化調整区域に分けることが「区域区分(線引き)」と呼ばれるもので、その目的は、市街化する範囲を限定することにより無秩序な市街化を防止するためです。
1-2.市街化調整区域だとなぜ売れにくいのか?
土地や家の売却の際に、大きな影響を与えるのが立地です。立地とは、その場所の利便性のことを指すのが一般的ですが、利便性とは別に、土地の区域区分による影響もあります。
市街化調整区域は、利便性が悪い田舎にあるため価格が安いだけでなく、買主にとって不都合なことが多いため価格が安くなったり売却を断られたりするのです。
と思われる人もいるかもしれません。
具体的には、次のような不都合や問題点があります。
- 今、家が建っていても、第三者が購入する場合、売買できるかどうか役所の許可が必要
- 家を建てて良い地域ではないので、新築やリフォームでも役所の許可が必要
- 許可が出るかは個別ごとの審査で、買主の建てたい建物やリフォームの詳細な内容が前もって必要
それぞれの問題点について、詳しくみてみましょう。
2.市街化調整区域を売却する際の問題点
先に述べたとおり、市街化調整区域とは市街化を抑制する地域のことです。
都市計画法では、無秩序に家が乱立することを防ぎ、計画的な市街化を図る必要があるときには、都市計画に「市街化区域」と「市街化調整区域」の区域区分を定められるとしています。そのうち市街化調整区域は、「市街化を抑制すべき区域」と定義されています(都市計画法第7条)。
なお、市街化区域や市街化調整区域は行政が定める区域であるため、自分で選ぶことはできませんが、変更される可能性はあります。
おもな市街化調整区域の制限や問題点は、次のとおりです。
2-1.建物に対する制限が多い
市街化調整区域は、無秩序にお家や商店などの建物を建てて、市街地を拡大することを防ぐ目的で定められています。
そのため、市街化調整区域で家を建てるときには、自治体からの開発許可や建築許可が必要です。建て替えの際も同様です。基本的に、都市計画法に適合する建築物以外を建てることは認められません。
具体的には、開発工事(山林や水田などの未整備の土地を住宅用の土地にするための宅地整備工事)を行うためには、開発許可を取る必要があります。また、すでに家が建てられているなどの理由で開発行為が不要な場合であっても、家を建て直したりリフォームしたりする場合は、建築許可が必要です。
都市計画法によって、市街化調整区域で建築を認められる建物は、農業や林業、漁業を営む人々が建てる建物などに制限されています(都市計画法の第29条及び法第34条)。
市街化調整区域で開発や建築行為する場合は、誰がどのような用途で土地・建物を使うのか、個別に審査されて許可されています。そのため、現在家があるからといって、ほかの人に売却して住むことができるというわけではありません。
2-2.住宅ローンの融資の審査が厳しい
市街化調整区域にある土地や家の購入で住宅ローンを組む際、融資の審査が厳しくなることが多いです。
住宅ローンは、万が一返済が滞ったときのために、ローンを組んで購入した土地や建物を担保にします。
建築や活用にさまざまな制限がある市街化調整区域では、必然的に不動産の担保価値が低くなり、もし、滞納で差し押さえても売りにくいことから、金融機関は市街化調整区域の不動産の住宅ローン融資に消極的なのです。
そのため、市街化調整区域の不動産がかなり安い場合でも、ある程度の購入資金を用意できなければ住宅ローンの審査が通らないこともあり、結果として売れにくくなります。
2-3.インフラなどの負担が大きく、手続きが面倒くさい
市街化調整区域は、市街化を抑制する地域なので、行政は水道・電気・ガスなどのインフラ整備を積極的に行っていません。
そのため、所有者が電気やガス、水道などのインフラ設備の負担をしなければならない場合があります。
電気が届いていなければ最悪は自己負担で敷設しなければなりませんし、ガスは都市ガスではなくプロパンの購入が必要です。上水道はあっても下水道整備されていないところも多く、水洗便所ではなく浄化槽の時点で敬遠されるケースもあります。
土地を売る場合でも家を売る場合でも、新築建物を建てたい買主や既存の家をリノベーションを自由にしたい買主は、開発許可や建築許可を受けられるか確認する必要があり、その面倒さと許可を受けられるかどうかの不確実さが市場価値を下げています。
また購入してから、将来的に売却することを考えると買主にメリットが少ないため、市街化調整区域にある家は売却が難しいのが現実で、そのために需要も少なく、価格が下がりやすい傾向にあります。
3.売却前に確認しておくべき注意点
市街化調整区域の不動産が売れるかどうかは、買主次第になります。
買主の目的に応じて造成や建築に対する許可を申請するため、『行政からその許可をもらえば売れる』ということになりますが、買主の希望の間取りなどを設計するのにはかなりの時間が必要です。
そのため、市街化調整区域にある土地や家を売却したいときに、事前に確認しておくべき注意点を3つ説明します。
3-1.自治体の区域指定
2000(平成12)年に都市計画法が改正され、「区域指定制度」が導入されました。これは市街化調整区域であっても、自治体が指定した区域内の土地に限っては、住宅の開発を認める都市計画法の許可を得られる制度です。
区域指定されるためには「隣の敷地との距離が50m以内の建物が40戸以上ある」「市街化区域に隣接している」「上下水道などが適切に配置されている」など、自治体によってさまざまな条件があります。
自治体の条件をクリアして区域指定されていれば、許可は必要であるものの、誰でも家が建てられるので、家が建っている地域が指定区域か、まず確認しておきましょう。
自治体の区域指定かどうかは、GoogleやYahoo!で[●●市 区域指定制度]と検索すると調べられます。
3-2.事業によって開発された区域
都市計画事業、土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業などの事業として開発した区域であれば、市街化調整区域であっても建築行為への許可が不要となります。役所で調査することができます。
3-3.土地の地目
家が建っている土地の地目も、必ず確認しておきましょう。
登記上の地目が、市街化調整区域に指定される前から宅地であるなら、開発許可や建築許可が不要なので売却しやすくなります。固定資産税が宅地で課税されていても、宅地とは限らないので注意しましょう。
しかし、市街化調整区域の指定後に宅地となり家が建てられたケースでは、第三者が購入する場合には開発許可を新たに受ける必要があります。
家が建っていても地目が農地であるなら、農家を営む人にしか売却できません。農家以外の人が購入するなら、農地法により農地転用の許可を得る必要があるのですが、かなり厳しく、一番売却のハードルが高くなります。
地目の確認方法については、「土地・戸建の登記簿謄本の見方についてわかりやすく解説!」で詳しく説明してますので、ぜひ読んでみてください。
3-4.指定(線引き)の時期
建物が市街化調整区域に指定される前からあるかどうかによっても、売却の条件が異なります。
毎年送られてくる固定資産税納付書を確認すると建物の建築年月日がわかるので、自治体で市街化調整区域が指定(線引きといいます)された日と照らし合わせて確認しましょう。
もし、納付書がない場合は、役所で固定資産税評価証明書や公課証明書を取得するか、それもないときは固定資産税課税台帳を調べると確認できます。
線引きされた日は、1970年(昭和45年)頃が多いですが、自治体のホームページなどで確認するか、役所の都市計画課などの担当部署に直接問い合わせるようにしてください。
既存の建物が線引き前からあるものであれば、行政の都合で市街化調整区域に入れられたことになります。もともとあった所有者の権利を行政都合で制限することはできないため、規制緩和が行われていて、売却するときにも許可は必要ありません。
この場合、用途(住宅なら引き続き住宅)や敷地面積が同じで、規模が同規模(延べ床面積が1.5倍まで)など制限はありますが、条件を満たせば建て替えも可能です。
しかし、線引き前でも増改築したのが線引き後の場合や、線引き後に開発許可や建築許可を受けて建てられたものであるなら、所有者の相続人や近親者などでなければ、過去の許可の権利は引き継げません。
第三者である買主が購入した場合、許可していない第三者が使用することになるため、家の用途を変更したみなされるため所有者の変更だけで再許可が必要になります。
これは、建て替えや増改築の許可は無関係で、所有者の変更(用途変更)に許可が下りても、将来建て替えや増改築で許可が下りないリスクを買主が負わなくてはなりません。
4.市街化調整区域でも売却できる可能性が高いケース
市街化調整区域にすでに家がある場合でも、次のような場合であれば、基本的に売却は可能と考えられます。
4-1.市街化区域に隣接している場合
都市計画法第34条では、以下の条件に当てはまるなら都道府県の条例などに基づいて開発許可を得ることができるとされています。
- 市街化区域に隣接または近接している。
- 市街化区域と一体的な日常生活圏を構成していると認められる
- 市街化区域内にあるものも含み、おおむね50以上の建築物が建てられている
すでにインフラが整備されている市街化区域に隣接しているなら、許可することに特に不都合がないと考えられるためです。
そのため線引き後に建てられた家で、買主に開発許可の権利を引き継げない場合でも、今ある家が市街化区域に隣接しているのであれば開発許可がもらえる可能性がかなり高いと考えられます。
ただし、確実に開発許可が下りるかどうかわからないということは、トラブルを避けるためにも買主に明確に示しておかなければなりません。また、具体的にどのような条件を満たせば許可が出やすいのか、不動産会社にしっかりと役所で調査してもらう必要があります。
市街化区域については、「市街化区域・市街化調整区域とはなにかわかりやすくまとめた」で詳しく説明してますので、ぜひ読んでみてください。
4-2.市街化調整区域になる前に家が建てられていた場合
前述したとおり、市街化調整区域が線引きされる前に家が建てられていた場合には、問題なく売却できます。行政の都合によって個人の資産に制限をかけることは、適切でないためです。
しかし、買主が建て替えをするには、一般的に次のような条件があることは留意しておきましょう。
- 所有者の変更以外の、建築物の用途変更をしないこと
- 敷地の拡大などの開発行為をしないこと
- 住宅については既存建築物の延床面積1.5倍までであること
条件は各自治体によって異なり、条件を満たせなければ許可を得る必要がある場合があります。
売却を考えている家や敷地にどのような条件が設定されているのか、なぜ当時は建てることができたのかを、必ず事前に確認しておきましょう。まずは、不動産会社に調査をしてもらうのがおすすめです。
4-3.用途地域内にある場合
市街化調整区域は市街化を抑制するために定められた区域であるため、原則として都市計画における用途地域は定められていません。
用途(ようと)とは「つかいみち」という意味です。用途地域に指定されることにより、その地域ごとに建物のつかいみち(建物の種類)が決められます。例えば、住宅地域には工場を建ててはいけないなどの制限です。
しかし、市街化調整区域であっても、一定規模以上でまとまった宅地開発が許可されて、用途地域が定められている場合があります。
これは1970年〜1980年代にかけて、大規模な土地開発が行われていた、いわゆるニュータウンなどと呼ばれるエリアなどによく見られます。その多くは、良好な住環境を保護するための高さ制限などがある「第一種低層住宅専用地域」とされているケースが多い点が特徴です。
市街化調整区域であっても、このような特別な事情で用途地域が定められているエリアにある家であれば、ほとんどの場合、問題なく売却できるケースとなります。
5.市街化調整区域の物件は誰に売れるのか?
いろいろな制限がある市街化調整区域にある家の売却相手は、どのような人が考えられるのでしょうか。
最後に、どのような人であれば市街化調整区域の不動産を買ってくれそうかについて説明します。
5-1.隣地の所有者に売る
市街化調整区域にある家は、まず隣地の所有者に売却を打診してみると良いでしょう。
なぜなら、隣家に家族や親族が住むという理由なら、許可がおりる可能性が高いからです。
子どもを近くに住まわせたいと考えているような場合、隣家を購入したほうが土地を一つにまとめられるため、買主にとってもメリットになると考えられます。すでに開発許可を受けている場合は、家が劣化したときでも、同用途、同規模の建物であれば再建築も可能です。
また、土地を購入することで隣地が道路と接するようになるケースも、所有者にとってはかなりのメリットになるでしょう。
5-2.田舎の中古住宅を探している人に売る
これから新築するのではなく、田舎での中古住宅を探している人にとっては、市街化調整区域内であっても特に問題を感じない人も多いです。
特に、リフォームや再建築に際し、用途変更をせずに一定規模以下にするなどの条件を守れば許可が不要な場合には、買い手を見つけられる可能性が高くなります。
再建築についての条件は自治体によって異なるため、売却に際してきちんと確認したうえで、買主に説明できるようにしておくことが大切です。
5-3.買取専門の不動産会社に売る
市街化調整区域内にある家は、市街化区域内にある家と比較するといろいろな条件があるため売却は容易ではありません。
加えて都市計画法や、自治体の条例などにも精通している必要があり、市街化調整区域にある家の売却は取り扱わないとしている不動産会社も多くあります。
その点、買取専門の不動産会社であれば知識もノウハウがあるため、買取もスムーズです。新築が許可されにくい土地や建て替えが許可されにくい家でも、資材置き場・駐車場、太陽光発電など、市街化調整区域の土地の活用方法や、独自の売却ルートを持っている可能性も高いでしょう。
という方にはおすすめです。
まとめ
市街化調整区域における不動産の売却は、買主の目的で開発許可や建築許可の要件が変わってしまうため、売主側でどうにかコントロールできるものではありません。
売れるか売れないかは買主次第になるのですが、許可を得られそうな買主に絞って探すのは現実的に無理です。
したがって、買主が開発許可を得られそうか、事前に行政へ相談・照会してもらう必要があります。それでも確実とは言えないため、許可を得られないときは白紙に契約解除とする特約を条件に売買契約を結びたいという買主も少なくありません。
それほど、市街化調整区域の売却はむずかしいのです。
また、市街化調整区域は家の戸数が少ないため不動産の流通量が圧倒的に少なく、不動産会社の担当者でも、制度を間違って認識しているケースが少なくありません。
そのため、市街化調整区域の売却に慣れていない不動産会社では
と、話も聞かずに断ってくる会社も珍しくありません。
不動産会社の実利が少ないことも、市街化調整区域の売却を嫌う理由です。
そのため、市街化調整区域にある不動産の売却を成功させたいのであれば、市街化調整区域の不動産売却に詳しい不動産会社へ依頼することが最も重要なポイントになります。
したがって、市街化調整区域でも相談に応じてくれる不動産会社を探して相談しましょう。競争相手の少なさから、市街化調整区域を専門にしている不動産会社もあります。
市街化調整区域に詳しい不動産会社を探したいのであれば、ぜひ、「イクラ不動産」を利用してみてください。
無料&秘密厳守で簡単に素早くお家の査定価格がわかるだけでなく、市街化調整区域の売却に強い、あなたの状況にピッタリ合った売却に強い不動産会社が選べます。
イクラ不動産については、「イクラ不動産とは」でくわしく説明していますので、ぜひ読んでみてください。
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